TPP
TPPは米国の強い意向
 菅総理は通常国会における施政方針演説の最初の部分で、「平成の開国」として環太平洋におけるTPP交渉への参加を検討すると高らかに宣言しました。TPP参加する約10カ国のうち、日本は7カ国と自由貿易協定(FTA)や、経済連携協定(EPA)を締結、あるいは締結を予定しています。つまり、日本がTPPに参加することによって関税の撤廃に向かうのは、実体としては2か国である米国とニュージーランドだけということになります。従って、日本がTPPに参加することで生まれる最大の影響は、米国との間で両社がともに関税の撤廃をすることによってもたらされます。
そもそも、2009年の衆議院議員選挙が掲げていた目標としては、民主党は、米国とFTAの締結を目指すとしていました。それが、なぜここにきてTPPに変わってしまったのでしょうか。その背景には、米国からの強い要求があります。米国はサブプライムショック以降の経済復興を輸出の倍増を通じて図ろうと考えています。そのために思い切った金融緩和を行ってドル安に誘導したり、中国に大量の航空機を買ってもらったりと、さまざまな手を打っています。その中で、日本への農産物輸出についても、劇的に拡大しようとしているのです。2国間の協定とされる場合が多いFTAは、特定の農業関連商品たる農産物を貿易税撤廃の対象外とするという例外規定をつくりやすいのですが、TPPは多国間の協定なので、例外をつくりにくいのです。
そのとき消費者の選択は?
 それでは、仮に農産物の関税が撤廃されたら、何が起きるのでしょうか。それに関しては農林水産省が詳しい試算を行っています。関税が撤廃され、何も対策を講じない場合、農産物の生産額は4・1兆円減少し、食料自給率が現在の40%から14%へと低下します。国内におけるGDP(国内総生産)は約8兆億円減少し、約300万人の雇用が失われます。
農林水産省は19の主要品目について推計を行っているのですが、生産の減少率は、米、小麦がほぼ100%、牛肉が約70%、甘味資源作物とでんぷん原料作物は100%となっています。関税を撤廃すると、日本の農業は壊滅的打撃を受けるのです。
TPPに参加したとしても、日本の農業は高品質で安全性の高い農産物を作っているのだから、大きな影響は受けないとする人もいますが、私はそうした意見には懐疑的です。
例えば、米については、ブランド米や有機米などは、安い米が輸入されるようになっても影響は受けないでしょう。しかし、そうした高級米のシェアは1割に過ぎません。残り9割の普通の米はどうでしょうか。1993年の米不足のときに輸入されたタイ米は、国民にとても不人気で、後に不法投棄事件まで起こったので、外国産の米など買うはずがないと考えるのは早計です。このときに輸入された米は長粒種が中心で、日本で作られている短粒種とは種類が違うので、パサパサして食べられなかったのです。海外でも短粒種の米は作られていて、その食味は日本の米と大きな差がありません。
問題は価格です。外国産の米もピンからキリまであるのですが、安いものでは流通経費を加えても、小売店の店頭には10kg当たり1000円程度で並ぶでしょう。それに対して国産の米は10kgで3000円程度です。一般の消費者は間違いなく外国産の米を買うようになるでしょう。生活費に余裕があるわけではないからです。
また、もっと極端に外国産米に流れるのが外食産業です。外食産業には、原材料の原産地表示の義務がありません。そのため、コストの安い外国産米への切り替えが一気に進むとみられます。ですから、農林水産省が試算した米の生産が90%減少するという試算は、極めて妥当なものなのです。
実は、農林業ならびに水産業の生産が激減するということは、単に農林水産業だけへの影響にとどまりません。日本の農地は、保水の役割を果たし、空気を浄化し、美しい景観をつくっています。関税撤廃で耕作放棄地が激増すれば、それらの機能が一気に失われてしまうのです。農林水産省も、農業の多面的機能の喪失を約4兆億円と推計しています。しかも、この機能は一度失ってしまうと、取り戻すのが極めて困難になるのです。
今は世界に通用する実力を養うとき
 私は、日本の農業の競争力が弱いとは思っていません。日本の農産物の最大の特長は、安全性です。しかし、日本の農産物の安全性を世界に浸透させるのには、時間がかかります。なぜかというと、健康を害する農産物を消費者が摂取したとしても、多くの場合、実際に健康被害が発生するのは、ある程度の時間がたってからです。そのころには何を食べたか忘れてしまいます。仮に覚えていたとしても、人間はさまざまなものを食べているので、原因を一つに特定することが、非常に難しいのです。
日本の農産物は安全だ、というブランド力を高めていくためには、少しずつ信頼を積み重ねていくしかありません。そして、日本の農業の安全性が世界から広く認められ、日本の農産物が高価格でも、世界に通用するようになったそのときになって初めて、日本はTPPへの参加を検討すべきなのです。
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